CSS Nite LP, Disk 21 に行ってきた

CSS Nite LP, Disk 21

 CSS Nite LP, Disk 21は、サブタイトルに「FONTS Typography WebFonts」とあるように、フォントや組版をメインとしたセミナー。もともと文字は好きで、でも何をどう勉強すればいいのかわからず、そのままズルズルと時間を過ごしてしまった俺にはとても面白いセミナーだった。

 内容を全部書こうかと思ったけど、長くなりそうなのでさっくり紹介する。

Session1: 知って得するアルファベットの基礎知識

 出だしから司会がスピーカーの名前を間違えるハプニング。でも、そのおかげで空気が幾分か和らぎ、スピーカーの話もすんなり聞けたような気もする。
 それはともかく、このセッションの講師は「高岡昌生(嘉瑞工房)」さん。今でも金属活字の活版印刷をやられているとのことで、欧文書体へのこだわり、というか愛に近い何かを感じた。金属活字はDTPのように文字の大きさを変えることができないので、必要な文字サイズだけ用意されており、全部で大体5トンくらいにはなるらしい。また、歴史的に見ても500年の歴史があり、それだけでも奥が深い。活版印刷とウェブとでは色々違う点も多いが、人が文字を読むという意味ではそんなに変わらず、マナーのようなものがある、ということで登壇された。今回のセミナーで、一番内容が濃かった気がする。
 話の内容は主にアルファベットの歴史とフォントの形状についてだった。WにはVを並べただけのものと重ねた感じになっているものがある、という謎もそこから紐解くことができる。文字の歴史を知るということは、それだけでもすごく楽しい事なんだと知らされた。

Section2: 欧文を扱う上で誤りやすい例

 スピーカーは、欧文組版ばかり10年もやってきた、フリーランスエディットリアルデザイナーのコン トヨコさん。「世界に出しても恥ずかしくない本を出版する」というコンセプトのデザインルームで働いてきたが、辞めて外に出たときに、意外と「普通だと思っていたルール」が世間で知られていなかったことから、今回のようなセミナーで話すようにしているとのこと。自身でもInDesignをベースとした欧文組版ルールについてのブログI Love Typesettingをやっている。
 話は主にQ&A形式で行われた。スピーカーから出された「どこがおかしいでしょうか」という問が出され、それを元に「欧文組版でやってはいけないこと」を知っていくといった感じ。一番の驚きは、ハイフンっぽいものには3種類あるということだった。普通のハイフン“-”と、日本語では「〜」で表すような範囲を示すEnダッシュ、“–”そして、区切り文字のように使うEmダッシュ“―”だ。見た目上ではわかりづらい分、これは気を付けないといけないなと感じた。

Section3: Webデザイナーのための欧文フォント入門

 自身をフォントオタクと称するヤマダコウスケさんがスピーカー。フォントの仕事したくてフリーランスになるほどで、PETITBOYS - Kosuke Yamadaというブログではフォントオタクしか買わないようなものを紹介していたりする。デザイン系書籍にも寄稿している。
 話は、いろんなフォントの紹介を通して、フォント選びの大切さを伝えるものだった。人気のHelvetica / Univers の話から、逆に不人気な Comic Sansの話まで、フォントを選ぶ上で人気や一般的な使用頻度も重要であるとのこと。ただ、人気ばかりでフォントを選ぶように言ってしまうと、フォントの制作意図が蔑ろになる、とのツッコミが入る。

Session4: The Web Fonts

 最後は、エンジニアよりのウェブ屋、小山田 晃浩さん。エンジニアよりというだけあって、内容もさることながら、スライドの作り方が技術屋っぽかった。
 話の内容は主に、WebFontの使い方だった。自分で任意のフォントをWebFont化したり、ウェブサービスを使うと簡単便利だったり、状況に合わせて使うのがいいと。ただ、フォントにもライセンスがあるので注意すべき。
 また、欧文でのWebFontのデータは軽いのでいいが、和文となるとそれだけで2桁MBになるので、状況を見て使うほうがいいとのこと。一方で、ウェブサービスによってはダイナミックサブセットという、「ページ中で使用されている文字のフォントだけをDLさせる」機能があったりするので、上手く使うといいとのこと。ただ、ウェブサービスは一般的に有料なので、それもまた状況を見て。
 俺が感じたWebFontの最大の利点は、HTTPリクエストが減る、という部分だった。HTTPリクエストによるページ表示遅延問題は、最近仕事で嫌というほど思い知らされたので、特に興味をひいた。一般的なウェブサイトは、見出しなどで独特なフォントを使いたいがために画像化してる部分も多々あるので、これが上手く使えるようになれば、あのようなストレスを味あわなくて済むんだなー。

まとめ

 総じて、「文字の品質も大事」と言っているように感じた。フォントを適当に選ぶとか、引用符など役物を適当に使うとか、詰めが甘いとか、そういうのは、出来上がったものを見る人達に違和感を与え、ひいては悪いイメージにつながりかねないんじゃないかと言っているように感じた。フォントひとつとっても色々知るべきこと、考えるべきこと、楽しむべきことがあって、やはり文字って奥が深いなぁ、と強く感じさせてもらえた。とても有意義なセミナーだったと思う。